いきのび協会ブログ

「高齢化が進む地域における運動教室のあり方」 ~いつまでも自由に歩ける身体づくりを目指すための機能改善体操の普及~

NPO法人いきいき・のびのび健康づくり協会 近畿支部研修講師の井上明美です。

現在は、自身が住む奈良県宇陀市において自主運動サークルを立ち上げ、ボディキネシス®(機能改善体操)の普及に力を入れています。「運動施設がないところにこそ運動指導を届けたい」という思いをもって活動中です。

今回は、高齢化が進む地域における運動指導者としての役割や運動教室の必要性。

「自立・自律」した生活を送るためのボディキネシス®(機能改善体操)の普及について・・・日々の活動の中で感じることをお伝えしたいと思います。

「地域の高齢者指導に興味があるけど1歩を踏み出せないでいる」
「地域で運動サークルを立ち上げたいけど方法がわからない」
「フィットネスクラブ以外の運動指導を仕事にしたいけど、どこから動いてよいかわからない」
という運動指導者さん向けの記事になりますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

人生100年時代の暮らしを考えよう!

私が住む奈良県宇陀市の高齢化率は40%を超えています。
更に、所属する自治会では高齢化率50%を超えています。2人に1人が65歳以上の高齢者ということになります。
皆さんの周りにもよく似た地域がたくさんあるのではないでしょうか。
今や日本の100歳以上人口は95,119人。9割が女性。(厚生労働省)
多くの方が100歳まで生きられる時代になってきました。

1960年頃は、65歳以上の高齢者1人を、20~64歳の現役世代が10人で支える「胴上げ型社会」と言われていました。 2020年は、3人の現役世代が1人の高齢者を支えていた「騎馬戦型社会」。 少子高齢化が進み、間もなく、1人の若者が1人の高齢者を支えないといけない「肩車型社会」になると言われています。

下のグラフを見ると、日本全体に少子高齢化が進んでいる様子がよくわかります。

(総務省統計局資料) 

私が奈良県宇陀市に移り住んで約30年。少子高齢化、人口減少が止まりません。
現在の人口は約26千人。約5年間で3,000人減少。
私が移り住んできたころからは1万人以上人口が減少しています。
幼稚園や小学校の統廃合が進み、小売店も軒並み少なくなりました。
引っ越しをしてきて間がない頃は、歩いて行ける場所に食品を買えるお店やコンビニエンスストアなどもありましたが、今ではかなりの距離を歩かないと食品が買えるお店はありません。

当時はバスの本数も多くありましたが、人口減少の影響から、最近ではバスの本数もかなり少なくなってきました。公共交通機関での移動も不便さを感じます。

少子高齢化が進む地域では同じような問題がたくさん起こっているのではないでしょうか?
そこで、地域の運動サークルに長く通って下さる70代~80代の方に聞いてみました。

「高齢になって暮らしの中で困ることは何ですか?」

  • ①車の免許を返納して運転が出来なくなり、自由に動きまわれなくなること
  • ②日々の買い物
  • ③病院通い

このようなご意見がたくさん上がってきました。
車生活が主となっている地域での高齢者の免許の返納問題は深刻です。

車に乗れなくなると・・・

「自由に自分の行きたいところに行けない」
「たくさん買い物をしても持って帰るのが大変」
「かかりつけ医は近くにあっても、体調が悪い時に精密検査などで遠くの病院に行くのは大変」

などの声が上がる一方で・・・

「買い物は移動販売車や生協(coop)などの宅配サービスを利用すると何とかなります」
「足が丈夫なら、お友達に会いに行くのもバスと電車の時間をうまく合わせれば大丈夫」
「一番困るのは、体調が悪い時に、バスや電車を使って大きな病院に行くことかな・・。タクシーを使うと、かなりお金がかかるので年金生活者にはきつい」

 

各自治体の取り組みとして・・・

・お買い物をした物を販売店が自宅に届けてくれるサービス
・高齢者のタクシー代金の割引サービス
・ライドシェアサービスの開始(=タクシー不足解消のため、一般ドライバーが自家用車で乗客を有償で運ぶサービス)など、様々なサービスも充実しつつありますが・・・

「結局は、病気にならないことが一番だね」 
「健康が一番」 
「最終的には自分の足が頼り」 というお声が上がってきました。

本当にその通りですね。
「人生の最後まで自分の足で歩くことができ、自分のことは自分でできる力を身につけておくこと(=自立)」
「心も身体も自分で整えられる力を身につけておくこと(=自律)」が、生涯心地よく暮らしていくために必要な力になってくるのではないでしょうか。

地域における運動指導者の役割

「運動は副作用のないお薬」と言われるように、適度な運動は身体にも心にも良いことばかり。

しかし、「一人ではなかなか続かない」と言う声もよく耳にします。
1人で運動するよりも、仲間と一緒に運動することでフレイル(=高齢による心身の虚弱、介護一歩手前の状態)の予防効果も高まります。
指導者のちょっとした励ましが継続につながります。

高齢化が進む今の時代、車の運転が出来なくても、自分の足で歩いて通える場所に「運動教室」があること、そして、運動教室を通して生活する場にたくさんの仲間が増えることは、人生の最後まで有意義に過ごしていくためにとても大きな意味をもつのではないでしょうか。

運動指導者は運動を教えるだけではなく、人と人とをつないでいく重要な役割を担っていると思います。

地域で開催する運動教室の目的

①生涯歩き続けるための体操の普及により健康寿命(歩行寿命)を高める。
②家の近くの知り合い・仲間を増やし、困った時には助け合える関係づくり。(地域コミュニティの活性)
③高齢者の一人暮らしが増える中、運動教室が安否確認の場。
④より良く暮らすための地域の情報収集の場。
⑤車の免許返納後の引きこもり予防。 
⑥運動教室を通してITリテラシーを高める(スマホやパソコンの活用方法を知り、社会に適応する力をつける) など

日本では高齢者の一人暮らし世帯は全体の約3割、高齢夫婦2人世帯も約3割と言われています。
なかには、家の近くに運動教室があっても「家族の介護のために家を空けるのが難しい」とか、「足が不自由なので短い距離とはいえ、歩いての移動が難しい」と言う方もおられます。

私が担当する地域の方に向けての対応として、体操動画の配信を行ったり、コロナ禍に始まった「シニアのためのオンライン運動教室」を継続しています。
オンライン運動教室には、60代~80代の方がご参加されています。

最初はなかなかうまくつながらず大変でしたが、今では画面越しに会話を楽しみながら、体操の効果も感じて下さっています。
家に居ながらにして人と関われるのはオンラインの魅力でもあります。

地域の運動教室の立ち上げ方

今までは、フィットネスクラブ主体に働いていた運動指導者の皆さんも、コロナを機に働き方を見直したいと思われた方も多いのではないかと思います。 この機会に地域での運動指導者としての関わり方を考えてみませんか?

地域の運動教室は、自治体主催のものが多いと思いますが、様々な課や団体がいろいろな運動教室を開催しています。

 

例えば私の住む市では、このような課が運動教室を開催しています

・健康増進課の教室(基本は64歳以下)
・介護福祉課の教室(基本は65歳以上)、
・生涯学習課の教室(ラジオ体操、水中ウォーキング、学校関係の健康教育事業)
・スポーツ協会主催のウォーキング
・まちづくり協議会主催のシニア教室
・公民館主催の教室
・地域包括センター主催の介護予防事業
・シルバー人材センター主催の教室
・その他 老人会、婦人会 などの団体

まずは、どの課がどのような運動教室を提供しているかを調べてみましょう。
市役所などに自ら出向いて「運動指導者」であることを知っていただくのも1つの方法です。

自治体主催の運動教室を運動指導者として担当することが出来たら、教室終了後に自主運動サークルを立ち上げると継続率も高く、スムーズに移行できると思います。

また、最近では企業も社員の「健康づくり」や「地域貢献」に積極的です。地域の企業や商工会の協力を得ながら「健康づくりのための運動」を広めていくこともできると思います。

自主運動サークルを一から立ち上げるには・・・

①誰でも気軽に参加できる教室内容を考える
②地域の方々との日頃からの関りが重要(地域の行事に積極的に参加してみるなど・・・)
③日頃から、自分自身の住む地域、またはサークルを立ち上げようとする地域のことに興味をもつ
④教室開催するための、レンタルできる場所を探す
⑤もしもの事故に備えての保険加入の検討
⑥インフォメーションの方法を考える(口コミ、チラシの配布、回覧板、掲示板、広報誌の活用など)

私自身、地域の行事に関わり、自治会やPTAの役員を経験したことで、地域のことがわかるようになり、近所の方々と知り合うきっかけにもなりました。

その後、自治会の役員を一緒に行った高齢の方から「私たちが歩いて行ける場所で運動を教えてもらえませんか?」とお声がけいただいたことが1つの運動教室を立ち上げるきっかけにもなりました。

地域の中での人とのつながりを大切にし、「地域の中で自分ができること」「役に立てること」を考えていくことが仕事に繋がっていくのではないかと感じます。

そして今では、私自身が地域の方々との関わりを深め、地域のことを知ることが楽しく充実した生活に繋がっていることを実感しています。

地域での運動教室のニーズは今後も高まっていくことと思います。
運動指導者の数が増えれば、高齢者の方々がより一層家の近くで運動教室に通うことができます。

私たち運動指導者は、運動指導者である前に地域住民の一人として自分自身が地域での生活を楽しむこと。
そのことが地域で暮らす高齢者の生活背景を知ることにもつながり、心に寄り添える運動指導者、地域で必要とされる運動指導者になっていけるのではないでしょうか。

その地域に住む運動指導者にしかできないことがたくさんあると思います。
まずは自分の住む地域の人たちの健康づくりから考えていきませんか。

誰でも気軽に参加できる教室内容として、NPO法人いきいき・のびのび健康づくり協会が普及する「ボディキネシス®(機能改善体操)」は高齢の方にも継続していただきやすい内容です。

高齢者に特化した指導者養成「ボディキネシス®シニアコース」では、全て椅子に座ったまま行える体操を学ぶことができます。
↓ 
https://www.ikinobi.org/trainer/bodykinesis/senior/

 

2024年 ボディキネシス®シニアコース指導者養成コース予定

★ボール編⇒1027日(日)9001300
★タオル編⇒1215日(日)9001300

運動指導経験がない方でも指導が可能です。
セカンドキャリアとして、自分自身の身体も整う機能改善体操の指導員を目指してみませんか?

一生歩き続ける足づくりのためには『フットキネシス®インストラクター養成コース』がお勧めです。
来年の2月に開催がありますので詳細をご覧ください。

2025年2月9日(日)
フットキネシス®インストラクター養成コース

その他にも協会では、地域で活動する運動指導者をサポートする「地域リーダーの養成」も行っています。 各地域の活動レポートはこちら

https://www.ikinobi.org/report/

地域リーダーに関しましては、レポート共に現在「地域リーダー」として活動されているメンバー紹介もありますので、ぜひご覧ください。

https://www.ikinobi.org/leader/

地域での活動をお考えの指導者の皆さん、これから運動指導に関わってみたいと思われる皆さま、お気軽に お問い合わせください。

https://www.ikinobi.org/contact/

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